活動ファンド | 助成認定制度 |
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申請時期 | 2018年 第4回 |
活動地域 | 埼玉県 |
活動ジャンル | 音楽 |
活動者名 | 大津純子室内楽実行委員会 |
活動名 | 大津純子心のコンサート その27 |
活動名(ふりがな) | おおつじゅんここころのこんさーとそのにじゅうしち |
実施時期 | 2018年 12月 3日 ~ 2019年 5月 31日 |
会場 |
実施場所:代官山ヒルサイドプラザ(ヒルサイドテラス内) 所在地 :東京都渋谷区猿楽町29−10 |
寄付金額 / 目標金額 |
450,000円 /
450,000円
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音楽は様々な文化・芸術・人びとの営みと直結する創作活動であり、「社会との接点」にこそ その存在意味があることを聴衆の皆さまに認識して頂くことが当企画の第一の目標である。お客様には<心のコンサート>の命名通り、心に深く残る内容の提供と新鮮な興味をクラシック音楽に見出して頂くことを願って毎回心をこめた演奏会づくりに取り組んできている。
大津純子がアメリカで度々共演しているロシア人ピアニスト、イリーナ・コフマン(フロリダ州アトランティック大学准教授)はピアノ四重奏団を率いて長年にわたり活動してきた音楽家である。その彼女を迎えて今回初めてピアノ四重奏という,当シリーズとしては大きな編成の室内楽プログラムに取り組んでみた。ヴィオリストとチェリストは読売交響楽団団員で室内楽を得意とする森口恭子さんと渡部玄一さん。取り上げた作品は、アントニン・ドヴォルザーク:ピアノ四重奏曲第1番 ニ長調 作品23とロベルト・シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47の大曲が二曲。イリーナ・コフマンのバックグランドはスラヴ系ロシア人なので、「スラヴ人」の定義について調べてみた。中欧・東欧に住み、インド・ヨーロッパ語族スラヴ語派に属する言語を話す「諸民族集団」で、<スラヴ人>という“ひとつの民族”が存在するわけではなく、言語学的な分類にすぎない(ウィキペディアより)そうだ。その“スラヴ系”と言われる人々がヨーロッパ各地でつちかってきた歴史はかなり複雑である。スラヴ的色彩が濃厚なドヴォルザークのピアノ四重奏曲第1番は、彼の若いエネルギーと歌心が大変魅力的な作品。第2楽章の変奏曲の根底に流れる、独特の深い哀しみはスラヴ民族の複雑で長い歴史の中から生まれた<心の葛藤>が音楽となったように感じられる。イリーナ・コフマンの演奏は深い音楽性に満ちており、個性的で情緒ある歌い回しが素晴らしい。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロという三つの弦楽器とピアノとのバランスの取り方や対話の手腕も見事で、とても納得のいく演奏となった。
1842年はR. シューマンにとって『室内楽の年』と呼ばれるほど充実した一年で、有名なピアノ五重奏曲作品44の完成後間もなくピアノ四重奏曲作品47が作曲され、そして幻想小曲集作品88(ヴァイオリン・チェロ・ピアノの編成)や作品41の1番から3番までの弦楽四重奏曲などが生み出された。作品47のピアノ四重奏曲は、妻クララのために作曲されている。私的な感じ取り方ではあるが、第3楽章 Andante cantabile アンダンテ・カンタービレには『子どもの情景』作品15に含まれる『トロイメライ』の<夢の世界>が目の前に広がった。それ故に、このシリーズで何度か共演しているピアニスト・作曲家・編曲者である Wei-En Hsu (ウェイ=エン・シュ)にアンコール曲として、ピアノ四重奏のための編曲を依頼。結果的には其々の楽器の特性を引き出す素晴らしい仕上がりとなり、お客様にも大変好評であった。
トーク・コーナーのゲストは作家の篠田節子さん。アマチュア・チェリストとして室内楽をご友人たちと楽しみ、クラシック音楽に向ける情熱や知識が豊かな方だ。音楽をテーマにしたり、モティーフにした作品も多々書いておられる。シューマンのピアノ四重奏曲にも挑戦されたことがあるとのお話で、チェロ・パートの演奏の仕方についてチェリスト・渡部玄一さんにテクニカルな質問も用意されていた。最初の予定では私がインタヴュアーとして彼女に色々とお話を伺うはずだったのだが、いつの間にか立場が逆転。彼女からの、音楽的にかなり突っ込んだ質問に こちらが受け答えする運びとなったことに お客様も大喜びされ、大変楽しい対話となった。