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川俣正/仙台インプログレス・新浜

活動情報

活動ファンド SOMPOアート・ファンド
申請時期 第4回
活動地域 宮城県
活動ジャンル 美術、生活芸術
活動者名 公益財団法人 仙台市市民文化事業団
活動名 川俣正/仙台インプログレス・新浜
活動名(ふりがな) かわまたただし/せんだいいんぷろぐれす・しんはま
実施時期 2019年 4月 1日 ~ 2020年 3月 31日
会場 実施場所:貞山運河 新浜みんなの家 せんだいメディアテーク
所在地 :仙台市宮城野区岡田字浜通(新浜みんなの家) 仙台市青葉区春日町2-1(せんだいメディアテーク)

活動完了報告

【集客数】9,784人

【活動概況】
 せんだいメディアテークの事業「せんだい・アート・ノード・プロジェクト(以下、アートノード)」は地域の資源・課題・人々とアーティストをつなぎ、より多くの人に学習機会を提供する。アートノードでは、川俣正、藤浩志、伊達伸明などのアーティストによるプロジェクトや、地域をリサーチするための文化交流拠点を民間団体と運営するなど、複合的に展開している。
 そのひとつである長期プロジェクト、川俣正「仙台インプログレス」は東日本大震災により被害を受けた仙台市沿岸部を活動場所としており、その第一弾となる「みんなの橋プロジェクト」(仙台市宮城野区新浜地区)は、住民からの「橋が津波で流されて運河を渡れなくなった」という話を受けて構想された。この地域は、震災前の約150世帯から、約60世帯の現地再建にとどまっており、仙台市の沿岸部で一番、海に近い集落である。
2019年夏は、「仙台インプログレス」の一環として、運河を渡った先に「みんなの木道(120m程度)」を制作した。制作は川俣チームが、仙台のアーティストや芸術や建築を学ぶ県内外の学生と共同して行った。制作場所の確定には東北学院大学の協力により、原生植物などへの配慮を踏まえた選定ができた。お披露目は、新浜町内会と貞山運河倶楽部が主催する「貞山運河の渡し舟と新浜フットパス」の関連として実施した。フットパスでは、昨年度制作した「みんなの船」を使用して運河を渡り、「みんなの木道」を通って海側にある石碑や、植物観察をおこない、防潮堤を越えて海岸までを散策した。
2019年12月には、川俣氏とともに海岸沿いの新たな構想を作る市民向けワークショップを開催。ワークショップ成果は、1月から開催される「川俣正 仙台インプログレス2019 活動報告展」で紹介する。さらに、貞山運河倶楽部主催の「貞山運河フォーラム〜創造する運河」に参加、活動を紹介するとともに運河を巡る他のアクティビティとの交流を深める。また、これまでの活動の進捗を報告するドキュメントブック(小冊子 1,000部)を制作した。
 あわせて、「みんなの橋」実現へ向けた協議を仙台市建設局や宮城野区役所と随時進めているなか、関係する国や県の許可関係(防災林解除や河川工事申請など)において、沿岸部全体の将来像を踏まえた仙台市のより大きなビジョンの策定が不可欠となり、その検討が始められた。

【現状の課題】
 建設局との連携は継続しており、橋建設の実現に向けて協議を重ねている。が、「橋としての機能を持つ作品」かつ「恒久設置の土木的構造物としての橋」の併走には課題も多い。河川管理上の条件、作品部分の耐久性や荷重など、実施設計時には多くの障壁が予想される。地質調査、予備設計、本設計、出水期を避けての施工など年数がかかるため、その間も、「みんなの船」「みんなの木道」など関連プログラムを展開し、住民との関係を深め、市民の関心を惹きつけることが求められる。目前の具体的な課題は、3つあげられる。
①橋についての協議において、アーティストと建設局それぞれの観点がうまくすりあわせられるか。
②長期化せざるを得ないプロセスを地域住民や関心を持つ市民にとって有意義なものとできるか。
③市内全域、圏外から関心を惹きつける有効な「かかわりしろ」をどのようにつくることができるか。

【今後の改善点】
①川俣氏から派遣された建築家を交え、関係部局との協議を重ねていく。また、川俣氏は沿岸部被災エリアの復興計画の全体像に対しても強い関心を示しており、今後は、具体的な橋の協議と並行して、川俣氏とともに復興プラン全体への提案も進めていく。これを通じ、建設局に本プロジェクトについての理解をさらに促し、橋の作品性を確保していきたい。
②「みんなの木道」の延長となるものを運河の居住地側の市有地に整備中の「海辺の森」に制作する計画である。ここでは、植樹などの広く一般市民との協働を踏まえた防災林「海辺の森」に制作する計画。「みんなの木道」とのつながりが、運河によって分断されていることとなり、「みんなの橋」建設への欲求を可視化していく。また、「貞山運河フォーラム」に協力・参加し、運河をめぐって展開される自然保護活動、カヌー、水の保全活動など20を超える自治体や市民グループとの交流を深め、本プロジェクトのフォロワー、アクティビティ連携の模索を進めている。
③次年度も木道の第2弾となる計画を進める予定だが、将来的には「みんなの橋」の施工段階に近づく時期とあわせて、広く周知しての資金調達に取り組みたく、基金の受け入れ先にまつわる仕組みづくりをさらに進めたい。

【自己評価】
本プロジェクトをすすめるアートノードは、仙台市の教育局生涯学習部所管のせんだいメディアテークの事業である。したがって、かかる費用に応じた「学びの機会設定(メモリアル、経験、実践と学びなど)」が問われており、経済波及効果などの目標は求められていない。現時点で意識されている評価ポイントは以下の通りである。
① 被災沿岸部の復興への寄与、被災地への広い関心を惹きつけることができるか(メモリアル)
国際的なアーティストである川俣氏を、伊東豊雄氏らによる「みんなの家」につなげ、仙台市沿岸部地域の課題に長期で取り組む本事業は、復興への関心層、アートへの関心層、メディア、行政などから関心を惹きつけることができている。
② 仙台市の政策へのアーティストの接続、行政に「しなやかさ」が求められる経験を提供。(経験)
建設局・公園課・区役所との連携など、市の通常業務を超えた経験、また縦割りへの「横の回路」を形成することができた。
③ 地元のアーティスト、文化事業者、地域人材への経験、学習機会の提供。(実践と学び)
「貞山運河」に関わる諸活動との関わりを形成しており、さらに、アーティストや地域人材の発掘、連携を広げていきたい。

【SOMPOアート・ファンドの助成を受けたことによるメリット】
人や地域と作品、文化と行政をつなぐ状況づくりに長期的に取り組む本プロジェクトにおいて、都度の状況変化に対応するすみやかな働きかけとが必要となる。SOMPOアート・ファンドの助成は使途の規定が厳しくなく、変化し続ける現場に対し、予算において無理なく一つ一つのアクティビティを検討し、効果的に実践することを可能としている。なによりも「イベントありき」ではない本プロジェクトへの助成は他に類がなく、この点がSOMPOアート・ファンドの助成を受けることの最大のメリットである。

【活動実施における協力機関や他の協働団体の関与について団体名およびその内容】
新浜町内会(「仙台インプログレス」パートナー)/貞山運河倶楽部(「渡し船とフットパス」や「貞山運河フォーラム」開催における協働/貞山運河研究所改め)/嵯峨美術大学(制作への参加及び「仙台インプログレス」にかかる研究)/東北生活文化大学(WSおよび報告展協力)/東北学院大学(地域の環境保全にかかる研究)

【媒体への露出(記事タイトル/媒体名/掲載年月日)】
・『貞山堀の風にそよぐ 仙台・荒浜 蒲生 新浜 井土 再訪』(著 大和田雅人/河北新報出版センター)/2019年3月14日
・杜の日記帳 闊歩する日々/Kappo 仙台闊歩 vol.99(株式会社プレスアート)/2019年4月5日
・『Tadashi Kawamata,Sendai in Progress 2019』(編集・監修 岩﨑陽子、桒嶋壮志/嵯峨美術大学)/2019年12月10日
・新浜に生きる〜震災9年 命つなぐ"里浜"〜/明日へ つなげよう〜NHK東日本大震災プロジェクト〜(NHK)/2020年1月5日、3月10日
・貞山運河 アートの場に-仙台 にぎわい創出 市民ら探る/河北新報/2020年2月17日

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