活動ファンド | 助成認定制度 |
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申請時期 | 2014年度 第2回 |
活動地域 | 愛知県 |
活動ジャンル | 郷土芸能 |
活動者名 | 一般社団法人 荻野検校顕彰会 |
活動名 | 平曲演奏家の育成に関わる基盤整備事業 |
活動名(ふりがな) | へいきょくえんそうかのいくせいにかかわるきばんせいびじぎょう |
実施時期 | 2014年 7月 20日 ~ 2015年 3月 31日 |
会場 |
実施場所:名古屋市東山荘、名古屋市西文化小劇場、東京国立博物館応挙館、ほか 所在地 :愛知県名古屋市、東京都台東区など、ほか宮城県仙台市など検討中 |
①平曲鑑賞会開催事業/
平家物語成立以来約800年の伝統を守る盲人伝承の伝統芸能は現在、今井勉氏一人のみとなっている。
その貴重な芸能を鑑賞し保存に資する機会として第21回目の平曲鑑賞会を開催した。
名 称 : 第21回平曲鑑賞会
テーマ : 名古屋平曲の伝承を守る
日 時 : 平成26年6月14日(土)
場 所 : 名古屋市西文化小劇場
参加者数 : 約120名(内、学生25名)
司 会 : 名古屋女子大学教授 林 和利
平 曲 : 「祇園精舎」「紅葉」 国風音楽会 会長 今井検校勉
講 演 : 「小秘事「祇園精舎」の復元をめぐって」 武蔵野音楽大学教授 薦田治子
今井勉氏は当道系の名古屋平曲を伝承する唯一の伝承者である。今回特に荻野検校による譜本
「平家正節」を元に復元した「祇園精舎」を再演して、平曲演奏者育成のための指導法や教材開発
を研究する契機となった。
今後はさらに平曲の録音・映像の収集に努め、これを若い修習者に提供できる映像や音源として
デジタル化し、平曲演奏家育成のために視聴覚教材として広く活用できるように編集・制作し、
公開していくことが必要であると考えられる。
②妙音会―弁天講(弁財天祭)―平曲会と茶会 開催事業/
江戸時代に名古屋の七ツ寺で毎年、10月15日に行われていた弁天講(弁財天祭)に倣った恒例催
事である。今回は津軽系の館山甲午師生誕120周年&27回忌追善として、館山甲午師の芸脈を受け
継ぐ平曲演奏を行い、館山宣昭氏門下の平曲修習者が集い、演奏の発表と研鑽、交流の場となった。
日 時 : 平成26年10月11日(土)
場 所 : 名古屋市東山荘
参加者数 : 約40名
司 会 : 名古屋女子大学教授 林 和利・正文館書店会長 谷口正明
解 説 : 「七ツ寺の弁財天」 荻野検校顕彰会参与 尾崎正忠
平曲奉納 : 「平家連署願書」 平家琵琶研究保存会代表 館山宣昭
献茶・呈茶 : 裏千家 尾崎宗忠他
講 演 : 「館山甲午師の平曲に関する思い出」 平家琵琶研究保存会代表 館山宣昭
平曲会句組 :
「祇園女御」 前田流平家詞曲相伝 後藤光樹
「殿上闇討」 後藤光樹門下 渡辺一宇
「泊瀬六代」 前田流平家詞曲相伝 鈴木まどか
平曲演習 : 「上日」(「紅葉」の中音) 指導 鈴木まどか
本年は館山甲午師生誕120周年&没後27回忌にあたり、津軽系伝承について館山甲午師の話しを
伺い、津軽系各会派の交流と研鑽の場となった。
③平曲特別企画の開催事業/
平成24年から開始した一般の参加者に向けて平曲を視聴する機会を提供する特別企画である。
今回は平家の貴公子で琵琶の名手であった平経正にちなむ平曲を鑑賞するとともに、平安末期の雅楽か
ら琵琶秘曲の再現など、昨年に続いて平曲に繋がる平安時代の古典芸能を鑑賞した。
テーマ : 平経正と琵琶青山
日 時 : 平成26年11月8日(土)
場 所 : 名古屋市西文化小劇場
参加者数 : 約110名(内、学生26名)
司 会 : 名古屋女子大学教授 林 和利
解 説 : 「平経正と琵琶青山」 元名古屋女子大学教授 大森北義
平 曲 : 「竹生島詣」 国風音楽会会長 今井検校勉
平 曲 : 「経正都落」 前田流平家琵琶 橋本敏江門下 鈴木孝庸
平 曲 : 「青 山」 前田流平家琵琶相伝 古川久美子
平安の琵琶曲再現 :「輪壹―青海波・石上流泉・啄木」
京都市立芸術大学 日本伝統音楽研究センター 準教授 田鍬智志 齊藤尚
今回は先回に引き続き朝日カルチャーセンターと共催事業とし、その受講生約十名が参加した。
④平曲関係団体の活動支援事業/
今回は昨年に続き江戸時代の記録、元禄15年12月14日の吉良邸茶会に範を取り、この中で行わ
れた平曲の詠唱を再現し、各会派の発表・交流会とした。
名 称 : 平曲発表会「平曲会と平曲講座」
テーマ : 平曲と供茶
日 時 : 平成26年12月14日(日)
場 所 : 東京国立博物館-応挙館-
参加者数 : 約40名
司 会 : 池原哲男
平 曲 : 「蘇 武」 前田流平家詞曲相伝 平曲研究所代表 鈴木まどか
平 曲 : 「足 摺」 前田流平家詞曲相伝 壱の会主宰 入澤美栄子
解 説 : 「平曲の巻通しについて」 NPOパイプス・オブ・ピース代表 浅見太郎
平 曲 : 「文覚強行」 前田流平家詞曲相伝 古川久美子 鈴木まどか
平 曲 : 「征夷将軍院宣」 前田流平家詞曲相伝 平曲研究所代表 鈴木まどか
平 曲 : 「鶏 合」 前田流平家詞曲相伝 古川久美子
平曲演習 :「上 日」 指導 入澤美栄子
⑤平曲関係資料の収集・録画・録音等の保存および研究事業/
平家正節研究会
平曲関係資料(演奏記録を含む)の収集・研究・公開をめざして、5回の研究会議を開催した。
その成果は次の通りである。
第1回平家正節研究会
日 時 : 平成26年6月14日(土) 18時~20時
場 所 : 中日パレス
出席者数 : 演奏家・研究者・本会幹事計9名
議 事 : 1.名古屋平曲と津軽平曲の現状についての情報交換
2.平曲演奏記録「復元曲集」DVD編集企画案審議
3.国風音楽会演奏記録「当道芸能四曲」DVD制作企画案審議
4.名古屋平曲アナログ音源の情報資料報告と活用について
第2回平家正節研究会
日 時 : 平成26年10月11日(土) 16時~18時
場 所 : 名古屋市東山荘
出席者数 : 演奏家・本会幹事計6名
議 事 : 1.平曲資料の保存・収集について収集情報評価と意見交換
2.名古屋平曲アナログ音源のデジタル化の取り組みについて
3.国風音楽会演奏記録「当道芸能四曲」DVD制作編集案審議
第3回平家正節研究会
日 時 : 平成26年11月8日(土) 18時~20時
場 所 : 名古屋市西文化小劇場
出席者数 : 研究者・本会幹事計5名
議 事 : 1.名古屋平曲アナログ音源のデジタル化案審議
2.平曲鑑賞会等諸行事の記録の活用と保存について
3.復元録音のDVD化と公開について 4.来年度の文化庁申請内容について
第4回平家正節研究会
日 時 : 平成27年12月20日(土) 15時~17時
場 所 : 尾﨑正忠邸
出席者数 : 研究者・本会幹事計4名
議 事 : 1.名古屋芸創センター平曲テープ再生テスト調査報告
2.国風音楽会演奏記録「当道芸能四曲」DVD映像使用著作権確認
3.盲人伝承「昭和の三検校」再現DVD編集案審議
第5回平家正節研究会
日 時 : 平成27年1月14日(水) 15時~17時
場 所 : 尾﨑正忠邸
出席者数 : 研究者・本会幹事計3名
議 事 : 1.平曲テープデジタル化調整テスト試聴審査
2.国風音楽会演奏記録「当道芸能四曲」DVD解説冊子編集案審議
3.盲人伝承「昭和の三検校」再現DVD制作編集審議ほか
第6回平家正節研究会
日 時 : 平成27年2月18日(水) 15時~17時
場 所 : 一般社団法人荻野検校顕彰会事務所
出席者数 : 研究者・本会幹事計6名
議 事 : 1.名古屋平曲アナログ音源デジタル化再現編集調査結果まとめと評価
2.国風音楽会演奏記録「当道芸能四曲」DVD粗編集版試聴審議
3.盲人伝承「昭和の三検校」再現DVD粗編集試聴審議
第7回平家正節研究会
日 時 : 平成27年2月21日(土) 15時~17時
場 所 : 尾﨑正忠邸
出席者数 : 研究者・本会幹事計3名
議 事 : 1.名古屋平曲アナログ音源のデジタル化CDテスト試聴承認
2.国風音楽会演奏記録「当道芸能四曲」DVD粗編集版試聴承認
3.盲人伝承「昭和の三検校」再現DVD制作原稿承認
⑤-ア.①②③④のデジタル撮影と保存事業(本年度催事の平曲演奏記録の映像録画)
本年度の本会催事の各種平曲演奏会で収録したライブ録画(デジタル)は、次の通りである。
平家正節 章段句名 平家物語 録画期日 行事名 演奏者
小秘事1 「祇園精舎」 1巻1 H26/6/14 第21回平曲鑑賞会 今井検校勉
巻1上6 「紅 葉」 6巻2 H26/6/14 第21回平曲鑑賞会 今井検校勉
読物下6 「平家連署願書」 7巻11 H26/10/11 妙音会 館山宣昭
巻2上6 「祇園女御」 6巻10 H26/10/11 妙音会 後藤光樹
巻2上1 「殿上闇討」 1巻2 H26/10/11 妙音会 渡辺一宇
巻2下6 「泊瀬六代」 12巻9 H26/10/11 妙音会 鈴木まどか
巻1上6 「上日」(「紅葉」の中音)6巻2 H26/10/11 妙音会 鈴木まどか
巻1下1 「竹生島詣」 7巻2 H26/11/8 師長公と琵琶白菊 今井検校勉
巻4下1 「経正都落」 7巻16 H26/11/8 師長公と琵琶白菊 鈴木孝庸
巻2下1 「青 山」 7巻17 H26/11/8 師長公と琵琶白菊 古川久美子
※平安の琵琶曲再現「輪壹―青海波・石上流泉・啄木」
H26/11/8 師長公と琵琶白菊 田鍬智志 齊藤尚
巻2上2 「蘇 武」 2巻16 H26/12/14 平曲会と平曲講座 鈴木まどか
巻2上3 「足 摺」 3巻2 H26/12/14 平曲会と平曲講座 入澤美栄子
巻2上5 「文覚強行」 5巻9 H26/12/14 平曲会と平曲講座 古川久美子 鈴木まどか
巻2下2 「征夷将軍院宣」(鎌倉院宣)8巻7 H26/12/14 平曲会と平曲講座 鈴木まどか
巻2下5 「鶏合」(壇浦合戦) 11巻8 H26/12/14 平曲会と平曲講座 古川久美子
巻1上6 「上日」(「紅葉」の中音)6巻2 H26/12/14 平曲会と平曲講座 入澤美栄子
⑤-イ.平曲演奏記録「平曲復元曲集」DVD制作事業(平成26年度報告書1)
本DVDは昭和の三検校の平曲の芸能を後世に遺すためのデジタル録音盤として出版発行するもの
で、本年度事業の中の⑤-エ-Bでデジタル化修復再現した音源を、さらに調整編集を加えたもので、
本体の32句を全て1枚のDVDに収録することにより比較試聴を可能にするものである。
企画編集の主旨
・昭和の三検校(井野川検校幸次氏・土居崎検校正富氏・三品検校正保氏)の平曲演奏記録を全
てデジタル化し今後の保存と活用に備えるものとする。
・昭和三検校の伝承句、独吟・連吟の各八句、全三十二句をDVDに収録する。
・DVD収納の本体冊子として平曲演奏記録「昭和の三検校」再現録音盤解説集を制作する。
・文化庁平成26年度事業の枠内で、平成27年3月末日頃発行予定とする。
●DVD収録平曲
DVDに収録する映像は伝承句、独吟・連吟の各八句、全三十二句とする。
①鱸(すずき) ②卒都婆流(そとばながし) ③紅葉(こうよう)
④竹生島詣(ちくぶじまもうで) ⑤生食(いけずき) ⑥宇治川(うじがわ)
⑦横笛(よこぶえ) ⑧奈須与市(なすのよいち)
その他オープンリールテープに収録の全曲を収録の対象とする。
●平曲盲人伝承「昭和の三検校」演奏記録 デジタル復元録音盤DVD解説集パンフレット編集案
B5版、無線綴上製本、66頁、200部発行、非売品
1.はじめに (林 和利氏)
2.平曲テープ調査報告 (田中厚司氏)
3.談話録 三検校の思い出、録音の様子 (三品千代子氏)
4.藤井制心の平曲研究―音楽構成の研究と採譜の軌跡― (藤井知昭氏)
5.伝承八句「平家正節」墨譜入り翻刻活字版 (鈴木孝庸氏)
6.あとがき「昭和の三検校」 (尾﨑正忠)
7.本DVDの使用方法について (西川 勉)
※本DVDと解説集については見本誌を添付したので参照されたい。
⑤-ウ.国風音楽会演奏記録「当道芸能四曲」DVD制作事業(平成26年度報告書2)
本DVDは、平曲伝承を育んだ当道の伝統を伝える財団法人国風音楽会の継承する芸能、平曲を
含めた当道芸能をまとめて紹介する物であり、我が国の邦楽全体に果たした当道の功績を明らか
にする曲目を集めたものとする。この貴重な映像は本会主催事である平曲鑑賞会の録画映像から
編集して出版発行し公開するものである。
企画編集の主旨
・(財)国風音楽会の伝承芸能である下記の5曲をDVDに収録する。
・DVD添付の本体冊子として国風音楽会当道芸能「四曲演奏記録」解説集を発行する。
・文化庁平成26年度事業の枠内で、平成27年2月末日頃発行予定とする。
●DVD収録曲案
DVDに収録する映像は以下の五曲とする。
①平曲 祝言「桜の中音」今井検校勉(2012/6/16 第19回平曲鑑賞会 名古屋市西文化小劇場)
②筝曲「古今組 秋の曲」今井 勉(2007/11/17 第十一回平曲鑑賞会 名古屋市西文化小劇場)
③筝曲「白菊」筝本手:三品千代子、筝替手:中村君子、胡弓:今井 勉
(2013/11/9 師長公と琵琶白菊名古屋市西文化小劇場)
④胡弓・秘曲「鶴の巣籠」唄・三絃:今井 勉、胡弓:澤田孝子
(2006/11/25 第九回平曲鑑賞会 名古屋市西文化小劇場)
⑤地唄三絃「屋島」唄・三弦:今井勉、琴:三品千代子、胡弓:南川久子
(2011/6/18 第十八回平曲鑑賞会 名古屋市西文化小劇場)
⑥平曲「奈須与市」今井検校勉(2011/6/18 第十八回平曲鑑賞会 名古屋市西文化小劇場)
●国風音楽会演奏記録「当道芸能」DVD解説集冊子編集案
B5版、無線綴じ上製本、32頁、200部発行、非売品
1.はじめに (尾崎正忠氏)
2.国風会と芸処名古屋の芸能 (安田文吉氏)
3.インタビュー 三品千代子氏に聞く「国風音楽会の伝統と芸能」 (西川 勉)
4.収録曲解説(収録回プログラムより流用転載)
5.編集後記 (西川 勉)
6.本DVDの活用のために (西川 勉)
※本DVDと解説集については見本誌を添付したので参照されたい。
⑤-エ.平曲演奏記録デジタル化事業
本事業は先年発見した、昭和期に活躍した名古屋平曲の三人の検校の演奏記録である名古屋
市芸創センター所蔵の「平曲テープ(オープン・リール)」について、40~50年を経過してすでに
絶望視されたテープを修復再生し、さらに調整編集を加えてデジタル化したものである。
デジタル化した音源は27枚のCDに収録し音源提供者ならびに研究者に配布した。
●テープの概要
昭和42年~45年収録の盲人伝承平曲八句を3人の検校が独吟と連吟(合唱)を併せた演奏記録
で、合計32句を本体とし、編集前・編集中途のテープ5句を加えた原版テープである。
名古屋市芸創センター所蔵の「平曲テープ(オープン・リール)」は、40~50年を経過してすでに
音質が絶望視されたテープを修復再生し、さらに調整編集を加えてデジタル化したものである。
7号オープンリールテープ20本、演奏記録32句、未編集5句、約26時間の録音からなる。
⑤-オ.ホームページ入会・申込・デジタルアーカイブ閲覧システム構築事業(H26~28年度継続事業)
顕彰会のホームページに会員専用システムを構築制作し、会員利用者が動画・録音・文書資料
のコンテンツを閲覧・配信できるようにする。
今年度はCMSシステム導入し、メールフォーム開設、会員ページアクセスセキュリティシステ
ム企画設計、運用テストを開始する。
平曲とは、盲目の法師が琵琶を弾じながら「平家」を語り演奏する伝統芸能です。
その歴史は歌舞伎や能より古く、鎌倉時代から約八百年間続く古典芸能です。
しかし現在、盲人伝承の伝統を守る演奏家は愛知県に今井勉氏1名が残るだけでになり、その後継者も無く今や伝承が途絶える危機に直面しています。
八百年の伝統を誇る平曲の伝承を守り、次代へ確実に伝えるために、有能な演奏家を発掘し、育成することが急務です。
当会では、東京や仙台、新潟など各地に分散して活動している演奏家や研究者と連携し、演奏発表と鑑賞の機会を創造し、相互の情報交流を推進してきました。
平成26年度はさらに多くの演奏鑑賞の機会を提供し、平曲演奏家の育成に務めるとともに、優れた伝承者の演奏を記録、保存し次代に継承する、デジタルアーカイブの開設を目指して活動しています。