活動ファンド | 東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド GBFund 東日本大震災 |
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申請時期 | 第10回 |
活動地域 | 宮城県 |
活動ジャンル | その他 |
活動者名 | 建築と子供たちネットワーク仙台 |
活動名 | 堤町まちかど博物館/堤焼と堤人形の震災復興プロジェクト |
活動名(ふりがな) | つつみまちまちかどはくぶつかん/つつみやきとつつみにんぎょうのしんさいふっこうぷろじぇくと |
実施時期 | 2014年 6月 28日 ~ 2014年 11月 30日 |
会場 |
実施場所:堤町まちかど博物館 所在地 :宮城県仙台市青葉区堤町2-11-38 |
活動の概況
堤町まちかど博物館は、藩政時代からの焼物の町だった堤町に唯一残る六連の登り窯と堤焼や堤人形のコレクションを公開展示する博物館として、所有者の佐大商店と建築と子供たちネットワーク仙台の協働により、2001年に開設されました。開設以来、小学校の総合学習や地域の子ども会活動としての焼物づくりや堤人形の絵付け体験、市民の歴史探訪などが盛んに行われるなど、多くの人々に親しまれてきました。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災により博物館の登り窯の半分が崩落するなどの大きな被害を受けました。登り窯は、2012年に復興しましたが、展示品の堤焼のカメが壊れたり、そのキャプションが失われるなどしたため、今年度展示室の復興事業を行うことになりました。
2014年6月から10月まで、①堤焼カメ転倒防止木枠台製作と設置ワークショップ、②堤焼・堤人形キャプション製作、③お披露目見学会パート1、④堤人形「谷風」保護ケース修理とアクリル蓋等の製作、⑤堤人形の干支「ひつじ」絵付けワークショップとお披露目見学会パート2の活動を実施しました。
今年度の活動により、登り窯の修復からはじまった博物館の一連の復興を無事終え、博物館に新たな命を吹き込むことができました。これも企業メセナ協議会様とご寄付をいただきました各企業の皆様方のおかげと心より感謝を申し上げます。
私たちは、子どもたちがこの歴史的建造物に触れながら地域の歴史や文化を学び、大切に未来に引き継いでいこうとする市民に育っていってほしいと願っています。今後も、所有者や地域の方々、学校や市民センターなどと協働して堤町まちかど博物館を子どもたちの教育に活かす活動を続けていきたいと思います。
① 堤焼カメ転倒防止木枠台製作と設置ワークショップ
木枠台は、全部で大(L2040×W720×H250)3台と、小(L1900×W520×H250)4台が必要ですが、昨年度、半分の台を製作していましたので、今年度は残りの大1台と小2台を製作することになり、木工家の鈴木功師匠に依頼しました。木枠台は6月下旬から製作を開始、7月はじめに完成。その後黒色の自然塗料を何度も塗り重ねて仕上げました。
完成した木枠台は、8月26日、堤町まちかど博物館に運ばれ、展示台に設置する
ワークショップが行われました。参加者13名は開設以来の大掃除に悪戦苦闘しましたが、鈴木師匠の指導のもと、すっかりきれいになった展示台の上に木枠台を設置してカメをおさめました。
しかし、カメの大きさがまちまちなため、木枠台のマス目とカメの間があきすぎたり、逆に小さすぎてカメ底と展示台に隙間があいたりしたため、後日、木枠台の上に振れ止め板を取り付けたり、カメ底に高さを調整する台座を取り付けてカメの足元を固定しました。
② 堤焼・堤人形キャプション製作
震災で失われた展示品の堤焼と堤人形のキャプションを新たに製作するため、堤人形作家の佐藤吉夫師匠の指導のもと、9月はじめから5日間にわたって展示品の調査を行い、スチレンボードを加工してキャプション(W80×H50×D30×90枚)を製作し、それぞれの展示品の前に設置しました。
③ お披露目見学会パート1
展示室の復興がほぼ終わった9月17日、近くにある三本松市民センターと連携して、地域の方々など23名を招いて復興した博物館をお披露目する見学会を行いました。参加者は、昭和50年代まで登り窯で堤焼や土管などの焼物を作っていたこと、ひとたび窯に火を入れたら1週間夜通し薪をくべていたことなど、堤人形作家の佐藤吉夫師匠の話に熱心に耳を傾けていました。また、2階展示室では、震災当日、展示室で文化財関係の取材に対応中だった吉夫師匠が、揺れはじめるとすぐに人形展示室に駆け寄り、棚の上に置いてあった「谷風」を畳の上におろして守ったことや、取材陣と一緒に堤焼のカメを必死に押えて被害を最小限に食い止めたという話に一同感激していました。
見学のあとは修復した3房の登り窯を開放してカフェを開きました。窯の中では、焚物の灰が高温で釉薬のようにガラス状になったレンガがロウソクの灯りでピカピカと光っています。この幻想的な雰囲気のなかで、コーヒーとお茶を召し上がっていただきました。
参加者からは、「地域の宝をもっと市民に知らせ、大切に後世に伝える必要を強く感じました」「こんなに近くにこんな素晴らしいまちかど博物館があったなんて...参加して本当によかったです」「建物を保存していくのにお金がかかるし大変であることを知りました。ご苦労さまです」等々の感想が寄せられました。
④ 堤人形「谷風」保護ケース修理とアクリル蓋等の製作
博物館で最も古い堤人形である「谷風」(寛政年間製作)は、震災当日、吉夫師匠の機転で被害を免れ、人形展示室の床の上に仮置きされていましたが、今後の地震に備えて、人形を入れている保護ケースの桐箱の傷みを修理し、正面をアクリル板の蓋で保護するとともに、桐箱の転倒防止のための台座を製作。10月中旬、修理が終わったケースを博物館に運び、その中に「谷風」をおさめてもとの展示棚の上に安置しました。
⑤ 堤人形の干支「ひつじ」絵付けワークショップとお披露目見学会パート2
10月25日、10名の方々が参加して、堤人形作家の佐藤吉夫師匠と佐藤明彦師匠の手ほどきを受けながら、来年の干支「ひつじ」に絵付けをするワークショップを行いました。胡粉を塗った胴体の上に梅の花と松葉を描き、角に金を塗り、耳と鼻と口に紅を入れ、最後は慎重に目を入れると可愛らしいひつじが出来上がりました。
絵付の後は、復興した博物館を見ていただく2回目のお披露目となりました。みなさん、木枠台にきれいに並べられた堤焼のカメや修理を終えた「谷風」を熱心に見てまわりましした。