活動ファンド | 助成認定制度 |
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申請時期 | 2015年度 第2回 |
活動地域 | 愛知県 |
活動ジャンル | 芸能、文学、音楽 |
活動者名 | 一般社団法人 荻野検校顕彰会 |
活動名 | 平曲演奏家の育成に関わる基盤整備事業 |
活動名(ふりがな) | へいきょくえんそうかのいくせいにかかわるきばんせいびじぎょう |
実施時期 | 2015年 7月 20日 ~ 2016年 7月 19日 |
会場 |
実施場所:名古屋西文化小劇場、東北歴史博物館、名古屋市徳川園ホール等予定 所在地 :愛知県名古屋市、宮城県多賀城市、愛知県名古屋市 |
①平曲関係団体の活動支援事業/
本年は津軽系伝承の中心地である東北の仙台至近にある東北歴史博物館の共催を得て、「平家正節」
の流れを汲む津軽系各会派の演奏発表と東北の人々への告知啓蒙の機会として開催した。
名 称 : 平曲発表会と平曲講座
テーマ : 源義経を語る平家琵琶
日 時 : 平成27年10月12日(月・祝)13:30~16:20
場 所 : 東北歴史博物館 講堂 (宮城県多賀城市高崎1-22-1)
参加者数:約180名
司 会 : 名古屋女子大学教授 荻野検校顕彰会副会長 林 和利
解 説 : 「津軽平曲の伝承と『平家正節』」 平家琵琶研究保存会 会長 館山宣昭
平 曲 : 「 老 馬 」平家正節 十四ノ下一 橋本敏江門下 鈴木孝庸
連吟「 弓 流 」平家正節 七之下五 後藤光樹門下 大野美子・片山典子
「 腰 越 」平家正節 読物上五 平家琵琶相伝者 館山宣昭門下 古川久美子
平曲講座:「 上 日 」演習 平家正節 一之上六(「紅葉」の中音)
指導 後藤光樹平家琵琶伝承之会主宰 後藤光樹 演者・来場者全員参加
東北は仙台の地元在住、館山宣昭門下の平家琵琶研究保存会ならびに、後藤光樹門下の平家琵琶伝
承之会をはじめ、橋本敏江門下など、関東、東北を合わせ「平家正節」の流れを汲む会派・社中が
一堂に集い、演奏を披露して、互いの研鑽、交流の場となった。
②平曲特別企画の開催事業/
今回の目的は、盲人伝承を守る今井勉氏の平曲とともに、その平曲が育んだ伝統芸能のうち、特に
能楽に与えた影響を感得するとともに、その歴史的な流れを理解し、貴重な古典芸能に触れる感動を
共有することを目的に開催した。
テーマ : 平曲と能の謡 ―俊寛―
日 時 : 平成27年11月15日(日)14時~16時
場 所 : 名古屋市西文化小劇場(ホール)
参加者数 : 約120名(内、学生26名)
司 会 : 荻野検校顕彰会副会長 谷口正明
解 説 : 「 平曲と能 ―俊寛― 」 名古屋女子大学教授 林 和利
平 曲 : 「 卒塔婆流 」 国風音楽会会長 今井検校勉
平 曲 : 「 足 摺 」 前田流平家琵琶 相伝者 後藤光樹門下 大野美子
謡 曲 : 「 俊 寛 」 能楽師 観世流シテ方 久田勘鷗(かんおう)
今回の成果として平曲が能楽へと続く我が国の芸能における重要な役割を果たしたことを明らかにし、
平曲の保護と継承の必要性を強調することができた。今回のこの貴重な演奏記録を保存し、
今後の学習や習得に活用する企画を検討していきたい。
③平曲鑑賞会開催事業/
恒例の平曲鑑賞会も今回で第23回目を迎え、盲人伝承を守る今井勉氏の平曲を鑑賞した。
国風会の元会長であり昭和の三検校の一人、三品検校没後三十周年にあたり、特別企画とし
て「三品検校を偲ぶ」会として開催した。
名 称 : 第23回平曲観賞会
テーマ : 三品検校没後三十周年 特別企画 ―三品検校を偲ぶ―
日 時 : 平成28年6月19日(土) 14時~16時
場 所 : 名古屋市西文化小劇場(ホール)
参加者数:約130名(内、学生31名)
司 会 : 名古屋女子大学教授 林 和利
平 曲:「竹生島詣」 国風音楽会会長 今井検校勉
講 演:「三品検校の思い出と国風音楽会」 東海学園大学人文学部教授 安田文吉
筝 曲:「千鳥の曲」国風音楽会 胡弓:今井勉 箏:中村君子(本手)三品千代子(替手)
本会の目的は、盲人伝承を守る今井勉氏の平曲公演を行い、荻野検校が「平家正節」で
著した平家物語の吟詠と語りの伝統芸能を伝える名古屋平曲を、出来るだけ多くの人々に鑑賞
いただくとともに、その貴重な芸脈に触れて理解と共感と感動を共有していただき、その保護と
継承の機運を高めること、併せて貴重な演奏記録を保存し、今後の習得に活用することにある。
今回も平曲の他、当道芸能である筝曲の録音・映像の収集も併せて行い、我が国の芸能に
貢献してきた盲人音楽家の作品を映像や音源として記録した。
今後これらもデジタル化し、平曲演奏家育成のために視聴覚教材として広く活用できるように
編集・制作し、公開に取り組んでいく予定である。
④平曲関係資料の収集・録画・録音等の保存および研究事業/
平家正節研究会
平曲関係資料(演奏記録を含む)の収集・研究・公開をめざして、5回の研究会議を開催した。
その成果は次の通りである。
第1回平家正節研究会
日 時 : 平成27年11月29日(日) 14時~17時
場 所 : 尾﨑正忠邸
出席者数 : 演奏家・研究者・本会幹事計7名
議 事 : 1.「平家正節」関連資料の保存について
2.津軽平曲について
3.平成28年度の企画行事について
第2回平家正節研究会
日 時 : 平成28年1月15日(金) 18時~20時
場 所 : 尾﨑正忠邸
出席者数 : 研究者・本会幹事計4名
議 事 : 1.平成27年度成果報告書の構成・内容について
第3回平家正節研究会
日 時 : 平成28年1月20日(水) 15時~17時
場 所 : 一般社団法人荻野検校顕彰会事務所
出席者数 : 研究者・本会幹事計8名
議 事 : 1.平成27年度成果報告書の製作について
2.橋本敏江師の平曲録音テープのデジタル化について
3.その他
第4回平家正節研究会
日 時 : 平成28年2月21日(日) 14時~16時
場 所 : 尾﨑正忠邸
出席者数 : 研究者・本会幹事計4名
議 事 : 1.平成27年度成果報告書の編集について
2.平成27年度成果報告書の校正内容審について
3.その他
第5回平家正節研究会
日 時 : 平成28年3月22日(火) 14時~16時
場 所 : 一般社団法人荻野検校顕彰会事務所
出席者数 : 研究者・本会幹事計6名
議 事 : 1.平成27年度成果報告書の完成とその内容について
2.橋本敏江師の平曲録音テープのデジタル化CD試聴について
3.その他
①②③のデジタル撮影と保存事業(本年度催事の平曲演奏記録の映像録画)
本年度の本会催事の各種平曲演奏会で収録したライブ録画(デジタル)は、次の通りである。
平家正節 章段句名 平家物語 録画期日 行事名 演奏者
巻四下3 「老馬」 巻九 H27/10/12 平曲発表会と平曲講座 鈴木孝庸
巻七下5 連吟「弓流」 巻十一 H27/10/12 平曲発表会と平曲講座 大野美子・片山典子
読物上5 「腰越」 巻十一 H27/10/12 平曲発表会と平曲講座 古川久美子
巻一上六 「上日」(「紅葉」の中音)六巻二 H27/10/12 平曲発表会と平曲講座 後藤光樹
小秘事 「祇園精舎」(復元句) 巻一 H27/11/1 今井検校の琵琶で聞く『平家物語』今井検校勉
巻一下5 「奈須与一」 巻十一 H27/11/1 今井検校の琵琶で聞く『平家物語』今井検校勉
巻一上二 「卒塔婆流」 二巻十五 H27/11/15 平曲と能の謡―俊寛― 今井検校勉
巻二上 「足摺」 巻三 H27/11/15 平曲と能の謡―俊寛― 大野美子
謡 曲 「俊寛」 H27/11/15 平曲と能の謡―俊寛― 久田勘鷗
巻一下一 「竹生島詣」 巻七二 H28/6/19 第23回平曲鑑賞会 今井検校勉
筝曲 古今組「千鳥の曲」 胡弓:今井勉 箏:中村君子(本手)三品千代子(替手)
④-A.平曲と平安雅楽、平曲からたどる再現雅楽、演奏記録保存出版事業(平成27年度成果報告書)
本会では、荻野検校の著した「平家正節」の芸脈を伝える平曲演奏家の演奏機会の提供を
通じて、平曲の伝承と保存に努めて参りました。しかしこの700年の歴史を持つ平曲は、
その価値が不明確なまま、我が国の文化への貢献度についても評価が低く、広く認知されて
いるとは言えません。本会ではかねてより、平曲の我が国における歴史的な位置づけ、特に
古典邦楽における系統的な位置づけを明らかにしたいと祈念してまいりました。
本会では平成14(2002)年の設立当初からこの問題に取り組み、第2回平曲鑑賞会
(2003/6/22)では「平家の音楽を考える」取り組みをはじめ、「中世の音楽としての平家物語」
(第8回平曲鑑賞会2006/6/4)、「能の本説としての平曲」(2010/11/7第17回平曲鑑賞会)。
などを経て、特別企画「師長公と琵琶白菊」2013/11/9を開催し、翌年更に、
特別企画「平経正と琵琶青山」(2014/11/8)を開催、平安末期の雅楽から平曲が誕生する流れを
解き明かす試みに取り組みました。
今回は、その記録映像の中から、平曲四句と雅楽琵琶四曲(六曲)を選び収録しています。
●平曲に登場する琵琶物語 ―平曲と雅楽― 解説・報告書 企画構成案
グラビア部(カラー4ページ)
「白菊図」(愛知県公文書館所蔵、大塚家文書)
「琵琶 伝 白菊写」画像(熱田神宮宝物館蔵)
演奏会アルバム H25年「師長公と琵琶白菊」H26年「経正と琵琶青山」田中厚司
はじめに 林 和利
第一部 『平家物語』に登場する琵琶物語
一、藤原師長と琵琶「白菊」 尾﨑正忠
(一)藤原師長の尾張配流 (二)師長愛用の琵琶「白菊」
二、大塚家文書と清音寺の「白菊図」 林 和利
三、『平家物語』における経正 ―〈音楽譚〉の位相 大森北義
四、平曲収録句と演者紹介
第二部 平安末期における琵琶の秘曲 ―その音楽と信仰を再び― 田鍬智志
おわりに 尾﨑正忠
DVDのご利用について 西川 勉
●DVD(収録映像)
第一部 平曲
一、「大臣流罪」H25/11/9 特別企画「師長公と琵琶白菊」 入澤美榮子
二、「竹生島詣」H26/11/8 特別企画「経正と琵琶青山」 今井検校勉
三、「経正都落」H26/11/8 特別企画「経正と琵琶青山」 鈴木孝庸
四、「青 山」H26/11/8 特別企画「経正と琵琶青山」 古川久美子
第二部 雅楽琵琶
古譜再現雅楽 ─解説 雅楽の今昔─
琵琶譜『三五要録』・箏譜『仁智要録』による平安末期雅楽の再現
五、琵琶風香調 筝盤渉調「秋風楽」
1、現行奏法による演奏(冒頭部)
2、平安末期の琵琶譜『三五要録』箏譜『仁智要録』の再現演奏(冒頭部)
3、平安末期の琵琶譜『三五要録』箏譜『仁智要録』の再現演奏(一返)
H25/11/9 特別企画「師長公と琵琶白菊」琵琶 齊藤 尚・箏 田鍬 智志
再現演奏
六、琵琶風香調 秘曲 「大常博士楊真操」
七、琵琶返風香調 秘曲 「石上流泉」「上原石上流泉」「将律音」(連続演奏)
八、琵琶啄木調 秘曲 「啄木」
琵琶 田鍬 智志 H27/12/24・25、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター
※本DVDと解説書については添付資料に見本誌を添付したので参照されたい。
④-B.各地埋蔵の平曲音源資料の発掘・収集とデジタル化事業(継続事業)
今回は、津軽系平曲の伝承者で館山甲午師(1894-1989重要無形文化財)の最も古い
弟子であり相伝者である橋本敏江師より、その所蔵するアナログ録音オープンリールテープ
を入手しこれをデジタル化した。いずれも30年から40年以上を経過する音源であり、
保存状態は良好とは言えないものであった。
●受託オープンリールテープの概要
句名 演奏録音日 公演名 テープサイズ
1 小宰相 49(1974).1.23 国立小劇場 18cm
2 文覚勧進帳 49(1974).1.23 国立小劇場 18cm
3 劔の巻 -1 49(1974).1.23-1 国立小劇場 18cm
4 劔の巻 -2 49(1974).1.23-2 国立小劇場 18cm
5 木曽最期 51(1976).12.9 三百人劇場 18cm
6 小宰相 Ⅰ 52(1977).12.15-1 三百人劇場 18cm
7 小宰相 Ⅱ 52(1977).12.15-2 三百人劇場 18cm
8 小督 -1 54(1979).11.28-1 ? 18cm
9 小督 -2 54(1979).11.28-2 ? 18cm
10 都遷 55(1980).11.28 三百人劇場 18cm
11 訪月 55(1980).11.28 三百人劇場 18cm
12 祇園精舎 55(1980).11.28 三百人劇場 18cm
13 祇王 PrintMaster ① 56(1981) 三百人劇場 18cm
14 祇王 PrintMaster ② 56(1981) 三百人劇場 18cm
15 祇王 -1 56(1981).12.9-1 三百人劇場 18cm
16 祇王 -2 56(1981).12.9-2 三百人劇場 18cm
17 六道 -1 57(1982).12.8-1 三百人劇場 18cm
18 六道 -2 57(1982).12.8-2 三百人劇場 18cm
19 木曽最後 58(1983).12.8 三百人劇場 18cm
20 法住寺合戦-2 58(1983).12.8-2 三百人劇場 18cm
21 法住寺合戦-3 58(1983).12.8-3 三百人劇場 18cm
22 宗論 59(1984).12.6 ? 18cm
23 木曽最後 60(1985).12.5 三百人劇場 27cm
24 那須の与一、弓ながし 61(1986).12.4 三百人劇場 27cm
25 壇浦合戦、先帝御入水 62(1987).12.10 三百人劇場 27cm
これらについてデジタル化し、現在は橋本師の師弟関係者により試聴調査を行った。
その他、津軽系平曲の館山甲午師(1894-1989重要無形文化財)の平曲演奏記録デジタル化
が懸案となっており、現在引き続き調査中である。