復興庁『心の復興』事業助成の一次審査通過後、面談を経て採択通知が二ヶ月遅れたのちに不採択となり、規模は大幅に縮小せざるを得なくなった。当初予定していた、説明会を開催して参加者を募ることは諦め、これまでの調査における個人的なつながりによる避難中の協力者の方々と、以下 10点を新規に撮影した。成果は以下の通り。
撮影プロジェクト
(1)パノラマ撮影による、避難区域内の避難者の故郷において、かつて避難者の風景だった360 度の記録
→2点
双葉町今泉春雄さん宅(定点記録として2回目)、取り壊しを決めた飯舘村荒利喜さん宅
(2)避難者の故郷の土地に根ざした祭りや集会の際の集合写真記録
→実施期間内には実現できなかったが、 2017/8/11に双葉町やぐらの共演復活盆踊りにて、参加者全員の記録撮影を実施
(3)帰還困難区域の四季の光景と、避難解除に向けて急速に変容していく避難解除準備区域、居住制限区域の風景定点記録
→飯舘村長泥(4点)
中心地であった『十文字』交差点
長泥地区と外を結んだ生活道路、峠の道(2点)
フレコンバックが積み上げられた長泥地区長泥
双葉町(3点)
海水浴場として賑わった中浜海岸
定点記録として継続して撮影中の、長塚地区の交差点
同じく、双葉バラ園
浪江町(1点)
大柿ダム近くの桜の風景
展示プロジェクト
福島県二本松市で開催された『福島ビエンナーレ』(10/8-11/6)に参加、メイン会場の二本松男女共生センターに於いて、これまでに撮影した、大熊町、双葉町の作品5点を展示。ビエンナーレの制作費はパネル加工費用に、プリント制作費をGB Fundから捻出。会場展示、webにはGB Fund助成を記載。総来場者数 83,575人。[報告画像1-2]
http://www.fukushima-art.com/004-%e5%b2%a9%e6%a0%b9%e6%84%9b.html
2016年11月には、福島県内の活動拠点である福島県三春町で毎年秋恒例の写真祭イベント『三春街かど写真展』の一環として個展を開催(11/11-12/29, いとうカメラギャラリー)。三春町には富岡町から多くの避難者たちが住んでいる。富岡町の写真のみに特化、また三春町の伝統芸能『ひょっとこ踊り』を習得した富岡町避難者による『富岡ひょっと連』を撮影したカラー写真と共にに展示した。[報告画像3-5]
オープン前夜にはギャラリートークを開催、 28名の参加者にプロジェクトの趣旨を理解いただいた。当日には富岡町からの避難者向けのレセプションを開催。富岡町から避難中の方達が多数来場した。総来場者数 約1000人。
他の助成の不採用により、規模を縮小しなければいけなかったのは、準備を重ねていたので非常に残念ではあったが、GBファンドの助成により新規撮影を行うことができた。
撮影に協力いただいた方に、出来上がった写真を見ていただくと、みなさん自分の故郷が360度記録された写真に大いに感銘してくださり、写真をじっと見つめるその眼差しから、懐かしさ、悔しさ、様々な思いを、こちらは想像をすることしかできないが、感じ取る。撮影前にも、震災前までの暮らしについて、インタビューを行い、カメラの前に立ってもらうその場所について、理解をするよう努力はしたが、仕上がった写真を見てもらうとき、そこにまた言葉が現れる。記録すること、それを展示などで見せること、どちらもとても大事なのだと、活動を続けて理解した。
故郷を奪われるという思いは、どう頑張っても、同じように感じることはできない。私は、この人たちの苦しみが「わからない」のだ、ということをきちんと理解し、また、震災の記憶が風化していく中で、語り継ぐことを恐れず、その言葉を失なわないために、 360度撮影という特異な写真が役立つよう、今度も活動を続けていきたい。
この活動がきっかけとなり、ハワイと双葉町の盆唄をつなぐドキュメンタリー映画の制作をすることとなり、アソシエイトプロデューサーとして、中江裕司監督と映画を製作中、2019年2月公開予定。
またハワイで福島のパノラマ写真の写真展、 2018/6/23-8/19 マウイアーツ&カルチュアルセンターに決定した。