活動ファンド | SOMPOアート・ファンド |
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申請時期 | 第1回 |
活動地域 | 大阪府 |
活動ジャンル | 美術 |
活動者名 | ブレーカープロジェクト実行委員会 |
活動名 | 地域に根ざした創造活動拠点の実験 2016-2017 |
活動名(ふりがな) | ちいきにねざしたそうぞうかつどうきょてんのじっけん |
実施時期 | 2016年 8月 1日 ~ 2017年 3月 31日 |
会場 |
実施場所:創造活動拠点「新・福寿荘」/「kioku手芸館 たんす」/「旧今宮小学校」 所在地 :大阪府大阪市西成区 |
(1)活動概況
【<旧今宮小学校>を活用した作業場づくり】
[実施期間/回数]2016年5月7日〜2017年3月20日/計29回 ※毎月1-2回オープン
[参加アーティスト]きむらとしろうじんじん(美術家)、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(美術家)、坪田直(空間デザイナー)、安藤聡(造園家)
2015年3月末で廃校になった小学校跡地を活用し、新しい創造の場を地域と共につくっていく創造的社会実験。旧今宮小学校に残る陶芸窯や畑(学習園)、廃棄物、廃材、体育倉庫など、その場にあるものを活用し、誰もが立ち寄れる(立ち寄りたくなる)地域に開かれた<作業場>をつくるプロジェクト。
「西成の土を集めて陶芸窯で焼いてみる!」
・20年以上使われていなかった陶芸窯を活用(作業場で使用する食器づくり)
・窯炊きの一連の作業を地域の参加者に伝授
「廃材をつかった木工作業」
・作業場に必要なものをつくる木工作業(作業台、ベンチ、看板、棚、日よけなど)
・廃材で積み木づくり
「学習園を再利用した畑作業」
・有機農法で季節の野菜などを栽培。参加者と収穫し、だるまストーブで調理
・収穫物から種の採取
・生ゴミから堆肥づくり(コンポスト)
・新たに造園家を招聘し、循環システムを取り入れた庭づくりに着手
【創造活動拠点「新・福寿荘」レジデンス事業】
[リサーチ実施期間/件数]2016年7月〜2017年1月/28件
[参加アーティスト]青田真也
愛知県在住のアーティスト・青田真也を迎え、2018年3月の発表に向けて西成区のさまざまな場所に足を運び、長きに渡り培われてきたものづくりの技術や道具に着目し、リサーチを始動。新たな作品制作に向け、継続して実施している。(現在進行中/成果発表は2018年を予定)
【創造活動拠点「kioku手芸館 たんす」】
[実施期間/回数]2016年5月19日〜3月29日/計42回 ※毎週1回オープン
[参加アーティスト]西尾美也
プロジェクト前半は、参加者である地域の女性たち(コアメンバー)が運営の担い手になることをめざし、「たんす」にある素材(毛糸や布など)の整理やスペースの片付けなどを行うとともに、その素材を使ったオリジナルプロダクトの開発を進めた。また11月よりアーティスト・西尾美也を迎え、新たなプロジェクトが始動。古着や布などを使い、西尾独自の手法を取り入れた服づくりを地域の女性たちとともに展開している。(現在進行中/成果発表は2018年を予定)
【ラウンドテーブル「アート×まちづくり 他領域との連携・協働の可能性」】
[実施日]2017年3月12日
[会 場]大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]
[ゲスト]きむらとしろうじんじん、西尾美也、古橋敬一(港まちづくり協議会)、吉田有里(MAT, Nagoyaプログラムディレクター/港まちづくり協議会)
地域外での活動発信を目的に公立文化施設にて「アート×まちづくり」をテーマとしたラウンドテーブルを開催。「<旧今宮小学校>を活用した作業場づくり」や「kioku手芸館 たんす」での取り組みについての報告を行うとともに、名古屋の港まちをフィールドに先進的な活動を展開する「港まちづくり協議会」よりゲストを招き、アートとまちづくりの有効な連携のあり方について対話を重ねた。
(2)達成できたこと
【<旧今宮小学校>を活用した作業場づくり】
・活動を地域に周知するため、同会場で行われる地域主催のお祭りと同時に作業場をオープンし、新たな層に活動を知ってもらうことができた。また、回覧板や区の広報誌への掲載など複数の広報活動を行い、毎回、地域より新しい参加者を得ることができた。
・毎回参加する地域住民も増えつつあり、子どもからお年寄りまで、それぞれの特技を活かしながら、作業に携わることができており、「自分たちで作業場をつくっている」という意識が参加者側にも芽生え、新たに立ち寄る人を受け入れていく体制ができつつある。
・畑作業に専門家が入ったことにより、土壌改良や伐採された果樹の再生など、その場にある環境をより活かした活動へと発展させることができた。
・近隣の工業高校との連携の一歩を踏み出すことができた。
【創造活動拠点:新・福寿荘レジデンス事業】
・これまでにつながりのなかった西成区内の小さな町工場などを訪ね、リサーチを行うことで新しい地域との関係が生まれている。
【創造活動拠点「kioku手芸館 たんす」】
・地域のコアメンバーが、ワークショップの参加者から「たんす」の担い手へと少しずつ変化している。
・コアメンバーとなった地域の女性たちによる手仕事の商品開発と試験的販売が始動。
・地域の女性たちと新たなブランドを立ち上げるプロジェクトが始動。アーティストにとっても新たな取り組み(挑戦)として、ワークショップの実施に向けて参加者を募るのではなく、固定の参加者(コアメンバー)を中心とした作品制作の実験となっている。
(3)現状の課題
【<旧今宮小学校>を活用した作業場づくり】
・自治会、障がい者や高齢者福祉施設、児童館、小中学校などの組織や施設と連携体制は取れているものの、協働体制のしくみづくりまでには至っていない。作業場に参画する地域住民たちと試行錯誤を繰り返しながら実践を続けると同時に、地域のキーパーソンらとの対話を重ねる必要がある。
・廃校後の跡地を売却するなどして収入を得たい大阪市の方針に対して、地域にとって必要な公共の場であるという認識を地域住民と共有し、作業場の常設化に向けて周辺地域へのさらなる周知と地域のコアメンバーを増やしていくこと。
【創造活動拠点「kioku手芸館 たんす」】
・参加者がコアメンバーとして担い手へと変化していく一方で、新規で訪れる住民の継続参加が難しい。(参加者の固定化)
(4)今後の改善点
【<旧今宮小学校>を活用した作業場づくり】
・今後発生する様々な作業のプロセスを、他領域の組織や施設と丁寧につなぎながら、協働体制の強化を図るとともに、周辺エリアへのアプローチも進め、地域への周知に注力する。
【創造活動拠点「kioku手芸館 たんす」】
・新規参加者を増やすためにも、古着の提供や服づくりの作業工程の細分化するなど、立寄りやすいしかけづくりを行う。
・地域住民だけでなく、地域外からの参加の呼びかけも強化し、メンバーの固定化を改善する
(5)自己評価
【<旧今宮小学校>を活用した作業場づくり】
・陶芸、木工、畑とそれぞれの作業を試行しながら、改善を繰り返し、魅力的な作業場へと少しずつ変化しつつある。
・将来的には、廃校跡を常時開いていくことについても町内会と共有できるようになったことで、今後新たなしくみづくりに踏み込んでいけるのではないかと考えている。
・工業高校との連携は、学校側の都合もあり時間はかかっているが、度々こちらから訪問し、教員や生徒とも関係性をつくりながら、具体的な活動内容を検討中であることから、今後の展開に必要なプロセスの段階であると言える。
・アーティストが入り魅力的な作業があることで、従来の年功序列型の地域活動とは異なり、多世代の人々が自主的に集まる場を生み出し、今後ますます高齢化していく地域において、コミュニティの新しいあり方について考える機会となっている。
【創造活動拠点:新・福寿荘レジデンス事業】
・リサーチを通して、これまでつながりのなかった新たな地域の資源を再発見できている。
・アーティストの青田真也にとっても、時間をかけて新たな表現活動に取り組む環境を提供できている。
【創造活動拠点:kioku手芸館「たんす」】
・オープンから3年の活動を経て、参加者である地域の女性たちがスペース運営の担い手になりつつあるなか、地域と連携した今後の新たな運営方法について考えるための実験を行うことができている。
・アーティストの西尾美也にとっても、固定の参加者(コアメンバー)がいる状況でのプロジェクト展開は初めてとのことで、新たな表現活動に挑戦する環境を提供できている。
【ラウンドテーブル「アート×まちづくり 他領域との連携・協働の可能性」】
・当初の目的通り、アート関係者だけでなくまちづくりや他領域で活動する人々の参加が得られ、後半は会場からの質問を受けてディスカッションも活発に行われた。
・ラウンドテーブルの会場である[enoco]は、他区にあり、馴染みの薄い場所にも関わらず、「たんす」で制作した服(西尾美也とのワークショップでつくられた作品)を着用したコアメンバー(地域の女性たち)が、手づくり和菓子とオリジナルプロダクトの販売を担当。また、「作業場」のメンバー(地域住民)も参加する姿もみられ、地域と文化施設(アートセンター)をつなぐ役割を果たしているといえる。
(6)SOMPOアート・ファンドの助成を受けたことによるメリット
地域のなかで草の根的に活動している当プロジェクトにとって、貴ファンドの立ち上げ第1回目の助成事業にて採択いただけたことは、大きな励みとなっております。芸術文化の公共的活動に取り組む非営利組織にとって、安定した財源の確保、運営基盤の構築は切実な課題です。今後の展望として、民間企業や福祉、教育、医療、まちづくりなど多領域とつながり、芸術文化の果たす役割を探りながら、既存の制度や枠組みでは解決できなかったさまざまな社会課題に対して、新たな手法を開拓していきたいと考えているなかで、貴ファンドに採択いただけたことは、今後の希望を見出す機会となりました。また、助成を受けることにより、人的にも活動内容的にも充実させることにつながるとともに、各地の活動とのネットワーク化・交流を図る機会にもなっています。
(7)活動実施における協力機関や他の協働団体の関与について団体名およびその内容
・大阪市(経済戦略興局文化部文化振興担当):委託金交付・実行委員メンバー。文化振興施策の一環として取り組む
・西成区役所総務課:事業展開の連携、区民への事業周知
・今宮ふれあい地域活動協議会/NPO法人まちづくり今宮:小学校跡地活用のための恊働先、地域住民に向けた広報面の協力など
・今池こどもの家/(特非)アザリア/大阪府立今宮工科高校/大阪市立いまみや小中一貫校/山王連合振興町会/(社福)山王みどり会/飛田地区商店街連合:プログラム実施の連携先、地域住民に向けた広報面の協力など
(8)集客人数
旧今宮小学校:のべ参加人数806人(2016年5/7〜2017年3/20|回数29回)
創造活動拠点「新・福寿荘」:リサーチ件数28件(2016年7月〜2017年1月|計9日)
kioku手芸館 たんす:のべ参加人数860人(2016年5/19〜2017年3/29|WS回数42回)
ラウンドテーブル:参加人数:67名
(9)媒体への露出
記事タイトル:西成区を拠点に活動する地域密着型アートプロジェクト「ブレーカープロジェクト」
媒体名:西成区広報紙「にしなり我が町」2016年10月号/掲載年月日:2016年10月1日