PANCETTA設立10周年の記念公演として、「多様性と包括性」をコンセプトに、世代や障害の有無に関係なく様々な背景を持つ人々が参加しやすい観劇環境で、気軽に舞台芸術に触れる機会を提供し、また、PANCETTAが常に追求してきた表現の可能性に挑戦した新たな舞台芸術の魅力を発信することができた。本事業は団体として大きく飛躍するための第一歩となり、今後この経験を生かして地方や海外へ展開していくための基礎づくりとなった。
(1)達成できたこと
コロナ禍以降初めて、4年ぶりに大阪城ホールにて開催いたしました。子ども達に、国内屈指のアリーナ会場である大阪城ホールで踊る感動を、ということで、スタッフが一丸となって準備にあたりました。参加48チームのうち、コロナ禍で実施していたオンラインでの活動からのつながりのあるチームも多数参加され、中でも、マレーシアから約50名の高校生のチームが、実際に参加されたこともたいへん大きな出来事でした。また、多くのチーム関係者から、コロナ禍以降、目標となる大舞台がなかったので、子ども達のモチベーションを向上させる意味でも良かったと、多くの喜びの声を頂戴しました。
(2)現状の課題
ただ、コロナ禍以前には、多数参加していた「小学校単位」での参加は激減し、まだ回復のめどは立っておりません。約4年間のコロナ禍と、先生方の働き方改革等で、休日に、学校外の行事に子ども達を参加させることへのハードルが、より一層高くなりました。これについては、簡単に解決する問題ではないので、開催の意義や、参加する子ども達にもたらす感動を、いかにして伝え、理解を深めていくのかが大きな課題として残っております。
(3)今後の改善点
小学校単位での参加が難しいとはいえ、もっと祭りのことを知ってもらう努力も必要と考えております。今回、大阪府教育委員会から府下の全学校に、チラシを配布して頂いたり、様々な面でのお力添えを頂戴しました。そのご縁をもっと深めていく一方、行政からの協力を頼るだけでなく、今、参加されている地域の協力を得ながら、草の根的な、演舞指導のイベントなどを継続的に実施してゆきたいと考えております。
(4)自己評価
コロナ禍を理由にした「大人の手抜き」というものを打破したいと、今回の申請段階で書かせていただきました。まだまだ小さな祭りではありますが、ボランティアは100名超、資金についても多くの皆様からのご支援を賜ることができ、今後に向けた大きな一歩になったかと思います。次年度は25年目という節目を迎えるにあたり、自分たちの理念をしっかりと守りながらも、さらなる飛躍を目指してまいります。
(5)「社会創造アーツファンド」採択によるメリット
毎回書かせていただいておりますが、今回も、特に企業にとっては、損金扱いにできるこの仕組みを使わせて頂くことが多く、心から感謝しています。そして、採択を頂けていることによって、活動の「社会的信用」にも大きくつながっています。
野外展では、本展史上初めて、池の上空を横断するダイナミックな作品(中尾紫香「遅野井橋(仮称)」)が出現し、池の対岸とを繋ぐ橋を幻視させ、観客を驚かせた。この作品は、助成により製作費の補助をすることで、高所作業車などを使い実現することができた。また、野外展の会場である善福寺公園にインフォメーションセンターを設置。助成により製作費の補助をして、大学の建築科のゼミにより制作、ゼミの大学生や参加作家が輪番で毎日インフォメーションスタッフを担当した。会場の設営を業者に依頼することにより、運営側の負担を軽減することができた。あらゆる年代の、情報を求める人、作品の感想を話していく人、お気に入りの作品の作家と交流する人、参加型作品への参加の相談をする人などが出入りし、期間中は、地域のアートセンターとして機能していたと考える。また、宣伝費を使ってガイドブックを増刷し、駅やまちなか、公園で積極的に配布したことで、開催の周知も広まっている。そのため、以前はまちなかの企画は集客が難しい場合もあったが、今年はどの企画も、会場に見合った規模の集客をすることができた。
企画テーマとしては「インクルージョン&サスティナビリティ」を選択したが、これはまさに当展の実施の主要な目的のひとつとも考えられる。まず子ども世代に関しては、小学校での、授業の一環としてのワークショップを4つの学年で実施、鑑賞授業も2つの学年で実施している。例として、6年生対象に、国立新美術館の教育担当もしているアーティストによる、自分とは何かを考え植物の形で表現するワークショップを実施。アートの考え方による物事の捉え方を学び、実作を通した自己表現のレッスンなどを行った。この小学生対象のワークショップは長年様々なアーティストと行っており、ここ数年は、これらを体験して育ち、建築系や美術系の大学に進学した子供たちが、戻ってきて参加するケースが多く見受けられ、育成の場として確立しサステナブルな様相を呈している。また、野外でのバンドネオンの演奏では、ベビーカーを押した子育て世代から、近隣の高齢者施設の入居者まで、幅広い年代や立場の方々に、音楽の芸術性や楽しさを感じてもらうことができ、インクルージョンの1例となった。さらに今年、数が多かったまちなかの企画では、現代アートの先鋭的なインスタレーションを路上の空き地で展示した作品、考え抜かれたコンセプトの写真展、フェイク映画祭など、現代アートとしても質の高い企画が並び、アートファンの要望にも応えた形となった。
来場者数 600,000人(西荻窪駅乗降者数より算出)
なかなか大きな金額の助成金を集めることはできませんでしたが、応援してくださる気持ちはうれしく、ありがたく思っています。金銭的な応援というよりは、精神的な応援をいただき、ともすれば、いろいろな困難の中での3年間の間に、何度か、「本当に実現できるのか?」という思いもありましたが、実際に活動を通して、力をいただき、先に進むことができたと思います。
そして、ようやく、上演の日を迎え、満場のお客様を見た時に、本当にこの日が迎えられたことの幸せをかみしめることができました。またこれからも、皆様にお越しいただけるようなオペラやコンサートを続けていきたいと願っています。
活動をしてみて
2023年、第32回国際音楽祭ヤング・プラハは全てのプログラムを無事成功裏に終えることが出来、関係者一同、喜びに堪えません。
ここ数年コロナ禍のなか、マスクを付け席をひとつおきに空け、会場を選び工夫を凝らしてなんとか音楽祭を実施してきましたが、これは若者の音楽の祭典、ヤング・プラハには不似合いです。やはりヤング・プラハは、いつも使わせていただいている宮殿ホールや音楽の殿堂、ルドルフィヌム・ドヴォジャークホールに毎年来てくださる音楽愛好家を一杯お迎えし、伸び伸びと演奏することが一番です。これから世界に羽ばたく若い音楽家にとり、なにより大切な演奏の機会を用意しなければいけません。
今年のチェコは9月に入ってもインディアン・サマーの暖かい気持ちの良いお天気が続く中、9月19日、チェコ上院の建物であるワルトシュタイン宮殿内のホールでのオープニングコンサートが穏やかな雰囲気の中、戸澤采紀さんの武満でスタートしました。オープニングコンサートは毎年多くの人が早くから開場を待ち構えます。
ちなみに、来場者の90%以上(場所によっては100%)はチェコ人の方々というのは、ヤング・プラハが現地に定着しているということで嬉しい限りです。
今年は10月9日、ルドルフィヌム・ドヴォジャークホールでのクロージングコンサートまで計11回のコンサートがプラハをはじめ、チェコ国内、そしてチェコとの国境に近いドイツのバッドシャンダウで行われ、どのコンサートもほぼ満席でお客様からの評価もとても高く大好評で終了できました。
今年特に新鮮だったことは、作曲家としての出演者が17年振りにあったこと、音楽祭始まって以来初めてオランダからの出演者があったことでしょうか。クロージングコンサートは、世界初演になった吉岡二郎さん作曲<A soul leaves a laughing tree>(魂が笑う樹木から去っていく)から幻想的に始まり、ヴィエニャフスキ、モーツァルト、グリークの流れは非常に魅力的で、観客は演奏にどんどん引き込まれ、大喝采のなか幕を閉じました。
薩摩研斗さんはユダヤ教会シナゴークでは厚い石壁にピアノの音を響かせ、ポーランド大使館ではドゥーベンドルファーの特製ピアノ"ショパン”を使わせていただき"ショパン” を弾き、日本人学校ではピアノを弾き、指揮の魅力を生徒に語り、クロージングコンサートでグリークのピアノ協奏曲の指揮をするという、これまで誰もしたことのない八面六臂の活躍を見せてくださいました。薩摩さんにとって一生の思い出となったことでしょう。中世の街並みがそのまま大切に保存されているプラハならでは可能なこと、プラハは音楽の都です。
チェコで活動する多くの日系企業の皆様の支援をいただき、駐チェコ日本大使館が心強い支援を下さり、チェコ文化省、チェコ上院、ポーランド大使館、ハンガリー大使館、プラハ市の皆様が毎年、応援をして下さり、結果、32年もの間、一年も途切れることなく国際音楽祭ヤング・プラハを開催出来ました。これまでの諸先輩のご苦労に想いを馳せ、今後もさらに続けてゆくことを誓いました。