本活動においては大阪市の中心部、淀屋橋にある財界のサロン「大阪倶楽部」でのマンスリーコンサートを実施した。18世紀音楽の普及啓蒙を大きな目的とし、バロック時代や古典派の作品を中心に、裾野を広げるためにスタンダードジャズとシャンソンも取り上げた。各月の公演は次の通り。
4月予定していた公演は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった。6月公演はA.ヴィヴァルディの珍しい協奏曲ばかりを取り上げた。7月公演では楽団首席奏者による弦楽四重奏を、9月公演ではバッハ作曲管弦楽組曲第3番のオリジナル版を、11月公演ではテレマンの様々な楽器のための協奏曲群をそれぞれ取り上げた。12月には毎年定番となっている高田泰治リサイタル「バッハ作曲ゴルトベルク変奏曲」の公演と首席チェロ奏者鷲見敏によるバッハ「無伴奏チェロ組曲」の公演を実施した。2月はアメリカのクラシック音楽作品とスタンダードジャズを取り上げた。3月にはバロック楽器でバッハの管弦楽組曲などを取り上げた。
本事業では大阪市中央公会堂と東京文化会館での定期演奏会、計8公演を実施した。4月には大阪市中央公会堂でモーツァルトの交響曲第39番とベートーヴェンの三重協奏曲を取り上げた。4月末に予定していた東京文化会館での公演は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった。7月には大阪市中央公会堂でモーツァルトの後期交響曲とベートーヴェンの協奏曲を組み合わせた公演と東京文化会館で高田泰治のチェンバロリサイタルを、それぞれ実施した。10月には大阪市中央公会堂でバッハ作曲「ブランデンブルク協奏曲」全曲公演を実施した。11月にはテレマンの協奏曲ばかりを集めた公演を、12月には毎年恒例となっている高田泰治リサイタル「バッハ作曲ゴルトベルク変奏曲」の公演を東京文化会館で実施した。1月には大阪市中央公会堂でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とモーツァルトの後期交響曲を組み合わせた公演を、東京文化会館で首席チェロ奏者鷲見敏によるバッハ「無伴奏チェロ組曲」全曲公演を実施した。
本年度は、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、当初予定していた海外からのアーティストを招へいすることはできなかったが、出演者の一部を国内アーティストに切り替えるとともに、感染症対策を万全に行い、例年どおりゴールデンウィークに春公演を開催することができた。
夏以降についても、国立工芸館、那谷寺、金沢城などの歴史的建造物を活用した公演を充実させ、年間を通じて公演を開催した。
オーケストラ・アンサンブル金沢をはじめとした県内外の一流演奏家による公演のほか、石川が誇る伝統芸能である邦楽や能舞などとクラシック音楽とのコラボレーションなど、石川の多彩な音楽文化を前面に打ち出したプログラムにより、これまで以上に多くの県民の方々に楽しんでいただくとともに、全国の音楽ファンに対して一層強くアピールできたものと考えている。
また、金沢駅周辺を基点とした金沢市中心部での公演はもとより、能登や加賀など県内各地で公演を開催した結果、コロナ禍のなか、25,000人を超える方々にご来場いただき、県内外のお客様が音楽祭の実施を求めていることを改めて実感したところである。
音楽祭の開催を通じて、音楽愛好家の裾野の拡大を図るとともに、音楽を通じた交流人口の拡大と地域のにぎわいの創出に繋がったものと考えている。
2020年の「月1コンテンポラリーダンス公演プロジェクト」に引き続き、2021年も助成認定制度の承認を得られたことで、地域の方々や参加者等に本活動をPRすることができた。寄付金こそ集まらなかったが、当法人並びに「国際こども・せいねん劇場みやざき」の視察やメディアへの露出が増えたことは、大きな成果であったと捉えている。特に、雑誌「地域創造」第47号に取り上げられたことは、文化芸術の関係者へ大きなPRになった。
活動者を2年続けて、寄付金をいただくことは簡単ではないと再認識している。しかし、芸術団体が自走するためには、資金の捻出が大前提となる。当法人としては、今後も助成認定制度を活用させていただきながら、関心を寄せてくれる方々(企業、団体、個人等)を増やし、それを地域に還元していきたい。
本事業の成果については、以下に示す。
【CandYアート塾】においては、募集人数に占める参加者数は88%。参加者数に占めるリピーター数は46%。コロナ禍の影響下、計画段階の目標値にほぼ達していた。参加者とその保護者を対象に実施したアンケート調査から、定期が不定期になったことや参加できる回数が減ったこと、内容の変更(美的創造的体験→メタバース体験)について、コロナ禍で継続するための臨機応変な対応だったと高く評価していたことがわかった。また、回答した保護者の全員が、子供の参加を、塾や習いごとに優先させていたことがわかった。「いろいろな体験ができた」「どれも自由感がある」 「よいきっかけになった」とポジティブな感想を多く得ることができた。
【CandYアートoffice】においては、オンラインのアート会議及び講義(計13回)の参加者(1〜10名/回)を対象にしたふりかえりのインタビューでは、活動の前後に何かしらの意識変容が起きたと回答した参加者の割合は70%。参加者のインタビューからは、先の見えないコロナ禍で、参加者主導で本事業を実施する難しさがわかった。その一方で、「国文祭みやざき2020分野別フェスティバル」の制作に係わった参加者は、「アーティストへの意識」や「接客意識」が変化したと回答。「学校ではやれない体験ができた」「それなりにいい写真が撮れた」という感想からも、本事業に参加したことをプラスに捉えていた。
活動をしてみて
東京文化会館大ホールで予定していた《パルジファル》、《ラ・ボエーム》をはじめ、入国制限により実現に至れなかった公演が14公演に上ったが、そのほかの公演については最善の対策をしたうえで実施することができた。
お客様を迎え入れるにあたっては、各会場の定員や客席配置の制限に沿い、入場時の検温と手指消毒を徹底をはじめ、アンケートの記入にWeb受付を設ける、密を避けるためアンコール曲の掲示をWebのみに変更する等の対策を行った。1か月の長期にわたって音楽祭を開催するにあたり、諸機関の対策基準を満たすには臨機応変な対応が求められたが、いずれの公演も大きな混乱なく終えることができた。
加えて、ほぼすべての公演をライブ・ストリーミング配信するという初めての試みを行った。コロナによる外出制限を余儀なくされたお客様にも音楽祭を届けたいという想いと共に実施した配信は、満足度の高い評価を得た。また、これまでクラシック音楽に親しんでいなかった人でも気軽に聴けたという感想も見られ、クラシック音楽を楽しむ人の裾野を広げる一助にもなった。
このような状況下でも音楽祭を支え、期待してくださる方々がいることに改めて感謝し、文化芸術の灯が消えることのないよう、使命感をもって応えていきたい。